反貧困世直し大集会2011「震災があぶりだした貧困」

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10月17日は、世界で「貧困をなくす日」と考えられ、各国でさまざまな取り組みがされる日です。反貧困ネットワークは、2008年から、国内の貧困解消とともに、この世界の動きに連動してイベントを開催してきました。

今年、日本は大震災に襲われ、多くの命が失われました。大震災によって、貧困問題はメディア上では影を潜めた感がありますが、生活不安から仮設住宅への移転に躊躇し、避難所に留まる人々の姿は、震災以前からの生活苦を示唆しており、震災によって新たな貧困が生じる側面とともに、震災によってすでにあった貧困が「あぶりだされる」面が見られると思います。反貧困ネットワークは、その点に焦点をあわせ、今回、このようなタイトルで集会を行いました。

「反貧困世直し大集会2011~震災があぶりだした貧困」は、620名もの参加者を迎え、大成功に終わりました。私たちの運動にご協力、ご賛同いただいているみなさまのおかげだと思っています。当事者はもちろん、貧困問題に関心のある人、興味はあったがこれまで関わるきっかけがなかった人など、様々な人たちがつどい、有意義な一日を過ごすことができました。

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全体会1 リレートーク「被災者・被災地から」

 リレートークでは、被災した16人から現状を聞いた。どの人の話も深刻で、多くの問題が提起された。

農・漁業への放射能の影響に悩む

福島県漁連の野﨑さん(ビデオ参加)は、地震で、約20ある港湾がすべて壊滅状態になり県漁連所属の300艘が被災、100人が亡くなり、原子力発電所の温排水を利用したヒラメの稚魚を育成し、原子力産業と共存しながら漁業を行ってきたのに、原発事故の影響で海が汚染され、魚がセシウムに汚染されたため、漁を自粛「なんとか福島産の魚にこだわって、漁業を再構築したい」と話した。

岩手県山田町で料理店を営んでいた大杉さんは7000万円のローンがあったが2年間返済を猶予してもらえた。さらに市民ファンドを得て山田の赤むくの佃煮「山田のおみごと」をつくって二重ローン覚悟でがんばっている。

二本松で農業に従事する女性は、地震に続く原発事故で、農業の大切な土が汚染され米からもセシウムが出たのにも衝撃を受けたという。「きちんと計測するので、消費者も知って買ってほしい」と話した。

国公労連東北ブロック議長の松木長男さんは自身も、家も母も津波で流されたという。連年の公務員の削減により求人開拓推進員とか、就職支援ナビゲータとかハローワークの非正規労働者専門の窓口で配置されている職員は、非正規で固められている。残業が常態化し地震後は家にも帰れない。気仙沼では通常の18倍の求職、石巻では12倍となるほど仕事がないという。

多様な人たちへの多様な支援が必要

大正大学4年であしなが育英会の大浴圭太さんは、震災で親を亡くした子どもたちの支援の様子を語った。

高校中退について福島の高校教員の杉内さんからDVDで発言があり、就職試験を受けるにも交通費などがかかるので貧困家庭の子どもは試験すら受けられないと話した。

被災地障がい者センターみやぎの及川智さんは「障害者のことを考えて仮設住宅とか避難所などは、設けられていなかった」と話した。

続いて精神障害の観点から福島県相馬市精神障害者支援事業所の、山下剛さんは「ひまわりの家は、もともと精神科病院がない地域で約100人を受け入れ、支援してきたが、今回の原発事故で、近隣の精神科病院が次々閉鎖され、薬がなくなったり、定期的受診ができないが入院者は1人も出なかった」と話した。

宮城県三陸町に住む在日フィリピン人佐々木アメリアさんは、津波被害に遭い、仕事場が流され、相談先への言葉の壁もあり、仕事がないと訴えた。「水産加工場や電子部品の仕事をしたい、日本人とフィリピン人が一緒になってコミュニティを再生したい」と話した。

将来への不安

原発近くから東京に避難してきたシングルマザーの宮田愛子さんは「津波と原発事故で避難所を転々として東京にきた。将来が不安。子ども3人を養うため、パソコン講座に通い、高等技能訓練を受けようと思っている。東電の補償もすぐに手続きできなかった。東京で暮らすにはお金がかかる。これから東京で、子どもとどうやって暮らしていけばいいのか眠れない」と話した。

志賀一郎さんは福島県の双葉町で、原発から4キロ、海から400メートル、津波で住宅はなくなり妻と孫も流され捜索も進まず宮城県の名取市に避難しているという。約40数年農業一筋でやってきたが農業はもうできない。「今は双葉町役場が埼玉なのでとりあえず、役場機能だけでも福島に戻ってもらいたい」と話した。原発と共生してやってきて、今まで放射能なんて全然考えていなかったという。

三春町の小学校で学校事務職員の佐藤さんは、

  1. 自治体を原発漬けにする電源三法
  2. 避難生活における格差
  3. 県外避難における格差
  4. 教育費思想の貧困

について話し、市町村が何の方針も示さないなかで、避難転入の家庭からお金を集めようとした問題に触れ、教育費を無償にすべきという思いを新たにした」と話した。

仙台市の長町仮設住宅に住む鈴木良一さんは「長町には233戸あるが、8月に自治会を結成。市、区など行政側は個人情報保護法のことで、入居者数や年齢などを教えないので、催しものをしながら情報を少しずつ集めている。外へ出てくる人はいいが引きこもっている人をどうやって外に誘い出して話をするかが大変」と話した。

南相馬市の渡部保男さんは義援金と東電の仮払い補償で6月に生活保護が打ち切られたと話し、「生活保護や義援金などに税金がかからないが我々生活保護者は、これを収入とみなす、ということはおかしい。皆おなじ人間で、避難生活を送ってきた」と話した。

Aさんは3.3キロ双葉町に住んで、一人親方として原発で働いていたが実際は、毎日会社の指示を得て働いていた。比較的放射線量は低いところだったが事故は上の会社に迷惑がかかるからと隠すほうが多く、自分でケガをすれば医者代、日当代は自分で持っていたという。被曝が怖いという感覚はなかったと、話した。

女性ユニオン東京の組合員は、陰湿ないじめが前からあったが、地震後の大きな余震の時、コピー機のスイッチを切ったことで壊したと責任を問われ修理代の請求と懲戒処分を言い渡され、退職に追い込まれたと話し、女性ユニオン東京に相談して問題を解決できたと話した。

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分科会 [多文化]

反貧困に民族の視点を!

はじめに、貧困概念の近年の国際的な傾向を、移住連の稲葉が紹介した。物質的な貧困だけではなく、貧困ゆえに人から見下される、侮辱されるなどの象徴的な領域や人間関係からの排除などにもおよぶ概念としてとらえるのが、国際的な潮流である。また、貧困問題を解決するための政策策定に、貧困を経験している当事者が参加し、その声が反映されることの重要性が、貧困の当事者から主張されるようになっている。

支え合うコミュニティーの必要性

次にカラカサンのメンバーから問題提起の報告をしてもらった。シングルマザーとして子どもを育てていく上で、言葉の壁ゆえに苦労すること、日本語の読み書きができないと、ハローワークで仕事を探すこともできないことなど、日常的にサポートしてくれるコミュニティの必要が訴えられた。外出時も、漢字が読めない、お金も持っていないゆえに、迷子になったらどうしようと、いつも不安でいっぱいであると述べていた。言葉が、日常生活を送る上での便利さだけではなく、自由と尊厳にかかわる問題であることが分かるような報告であった。

質疑応答では、日本生まれの移住者の子どもたちの問題は、日本語能力の問題ではなく、在日コリアンと共通する差別の問題のほうが大きいのではないか、という指摘があった。そこから、移住者の子どもたちに対するいじめの問題が議論された。また、参加者のひとりが、生活保護を受けているがゆえに在留資格を定住者から永住者に変更できないことは、貧困であるがゆえの不当な差別であることを指摘した。IT産業で働く参加者も、解雇されると帰国しなくてはならない問題を指摘していた。ドメスティック・ワーカーとして20年以上日本で働いている女性も、雇用主の引退により解雇されたら、在留資格が変更できず帰国しなくてはならない問題を紹介した。

参加者は合計20人、日本人よりも移住者の参加者が多く、当事者が日本社会に向けて発言する上で、エンパワーされていることを実感できる分科会だった。

(移住労働者と連帯する全国ネットワーク貧困PT http://www.jca.apc.org/migrant-net/
カラカサンFPAR http://www.k5.dion.ne.jp/~kalakasa/

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分科会 [官製ワーキングプア]

なくそう!官製ワーキングプア

昨年を大きく上回る45名が参加。内訳も、国、自治体、公共サービス民間の非正規労働者、正規職労組役員など多様だった。司会は安田(連帯労働者組合・杉並区)が担当した。

最初に集会実行委員でもある白石が、本集会と分科会の意図を説明した。「官製ワーキングプア」は、国や自治体に直接雇用されている非正規公務員だけでなく、仕事は公共サービスだけど身分は株式会社や社会福祉法人、財団、NPOなどの「公共サービス民間労働者」の問題でもある。本研究会は、06年に全国的な自主交流を開始、09年から「なくそう!官製ワーキングプア~反貧困集会」を開催し、社会的にこの問題にアピールしてきた。さらに11月、労働NPOを設立する予定などを報告した。

「おいしい公務員職」とは違う実態

特別報告として、港区職労本多書記長が、「自治体非常勤職員へのボーナス支給を実現するための考察」と題して基調的提案を行った。とりわけ東京23区はただ一区もボーナスや退職金などを支給していない。最近の司法判断は、一定の条件があれば非常勤職員への手当支給は法違反ではないし、国(人事院)は手当支給を奨励し、支給している。ボーナスなどを支給しないのは、人事政策としても愚かなことだ。各組合は要求を掲げて頑張るべき。この提起を受け、各自治体での支給状況などを発表していただいたが、温度差があることがわかった。

次に臨時職員の問題についての報告。都庁臨時職員からは「都庁は最悪」、2ヶ月ごとの契約で職場をたらい回しされ、6ヶ月働くと一ヶ月雇用止めされる。6ヶ月連続勤務とならないので、有給休暇がなく、子どもが病気になって休むと給料カットになるし、社会保障もない。千葉県の小学校教員から、4月早々からクラス担任が臨時教員で、1年間で一日のみ雇い止めされ、また違う学校に配置される。国の非正規職員からは、3月31日だけ雇われない。毎日勤務しているのに、日によって雇われ方が異なり、交通費も出ない、社会保険どころか労働保険にすら入っていない。では、「なぜ組合に入れない、入らないのか。それは雇用がぶつ切りだったり、短期更新なので、採用されないという不安がある」からだ。当該労組ではなく、地域ユニオンで組織する方法を模索するのも一案という声も出された。

公共サービス民間労働者問題では埼玉から、元請けの公共団体の責任が指摘され、野田市や川崎市の公契約条例の拡大と深化が必要との報告があった。

雇止め裁判をたたかう

さらに、雇い止め(解雇)裁判の報告に移り、武蔵野市で国民健康保険レセプト点検をしてきた家族が雇い止めされ、裁判中。自治体の雇用は「任用」ということで、雇う側の一方的な都合で「解雇」できるようになっている。裁判でもこれを覆した例はないが、中野区非常勤保育士裁判では慰謝料支払いとともに、法律の問題点を指摘している。何とか中野区を上回る判決を引きだしたい。11月9日が地裁判決の予定。

もう一人は杉並区で、正規職員を定年退職し、外郭団体の職員になったが、その上司に「排除」され、次は区立図書館の再雇用嘱託員になったが、そこを雇い止めされた。地裁では9月6日に判決が出たが、全面敗訴となり、高裁に控訴している。11月16日午後6時30分から控訴審に向けた集会を行う。

最後はこれからの運動についての意見。世間は、安上がり労働を節税と捉えてしまうのではないか、という発言に対し、例えば『週間ダイアモンド』の「おいしい公務員」特集で、官民給料比較資料を掲載しているが、逆に公務員では年収200万円以下の非正規公務員の給料が含まれていない。こういう公務員攻撃が行われているので、こちら側のキャンペーン運動も必要。今回設立するNPOは、未組織の非正規公務員へのメッセージでもあり、広報資料なども自前で作りたい、世論を動かすためにも参加してほしい、という発言で終了した。

(官製ワーキングプア研究会)

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分科会 [わかちあい]

心の痛み・体のつらさ・アディクション・生活の苦しさ ~みんなで話そう・わかちあい~

参加された人は、生活保護を利用中の人、もうすぐ利用することになりそうな人、以前、利用していた人、障害や病気のある人・ない人、仕事のある人・ない人など、様々な立場の方が参加されました。

初対面の人がほとんどなのに、今までいじめや差別にあってつらかったこと、先が見えない不安、人が信じられないままでいること、家族や社会にわかってもらえない苦しさ、寂しさを分かちあいました。「人は信じられない。でも、誰かとつながっていたい」と参加された方もいました。「報道」の方が3名参加していましたが、取材ではなく、「自分も当事者として」それぞれの痛みやつらさを語ってくれました。

それぞれが自身もつらいのに、他の人の話に「それはつらいなあ」と一緒にうなづきながら、深くて短い(?)2時間を過ごしました。

参加者数 34名
(くにたちあみてぃ、生活保護懇談会)

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分科会 [女性]

のんびり空間を楽しむ女性スペース

女性スペースでは、「ちくちく手縫いとおしゃべりの会」の女性たちが主体になって、刺しゅうの共同作品を作ったり、Tシャツにメッセージを刺しゅうしてリメイクしたり、お気に入りのバックを修理したりして、のんびりゆったりおしゃべりをしながら過ごしました。また、野宿をしている女性たちのあつまり「ノラ」の人たちが作った布ナプキンや、香港のセックスワーカーの人たちが作ったTシャツ、ミニコミ誌なども販売したりしました。着なくなった服を持ち寄って、物々交換も行われ、多くの女性たちが立ち寄り、ゆったりとした時間を過ごしていってくださったように思います。全体会の場所と離れていたので、場所がわかりにくかったかなということが気になりました。

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分科会 [原発労働]

貧困と原発労働を考える

分科会「貧困と原発労働を考える」には128人が参加した。福島第一原発の下請け会社の契約社員として15年働いてきた男性(Aさん)が原発労働の実態について語ったほか、ジャーナリストの風間直樹さん、布施祐仁さん、日本原子力研究開発機構労働組合の花島進書記長らが2時間に渡りパネル討論議論を行った。

Aさんは福島第一を中心に、同第二、女川、柏崎刈谷原発(新潟県)で働いた。1年契約の契約社員だったが、一人親方(自営業)扱いとされたため雇用保険など社会保険は未加入だった。震災をきっかけに、弁護士に相談して、社会保険に加入できた。原発で働く全ての労働者が保険に入る権利があることを訴えたくてシンポに参加したと訴えると、会場は盛大な拍手に包まれた。会社の命令で、ホールボディーカウンターで内部被曝の調査も受けたが、結果の数値が何を示すのかや、被曝量などは全く説明を受けていないという。内部被曝へのAさん自身の不安も述べられ、パネリストが会社の安全管理体制に首をかしげる場面もあった。

原発での請負構造

パネルに移り、風間さんは、協力会社(下請け会社)について言及。原発はもはや下請けなしにはまわらず、現場に作業員を送り込んでいるのは7次・8次の下請け会社。請負の形にすることで派遣法違反を免れ、劣悪な労働条件で労働者を雇っていることを明かした。東京電力はコンプライアンスやCSRに厳しい会社だが、請負については見て見ぬふりをしてきたという。原発は地元経済と密接に関わっており、交付金と雇用の面で持ちつ持たれつの関係のため、下請けを作らざるを得ないからだ。雇用証明書を発行しない、未成年者を雇うといった違反も多々あるといった、原発労働の不透明性を指摘した。

布施さんは、福島第一原子力発電所の協力会社社員の声を紹介。「地震が起きてからも家に帰らず冷却注水作業をしているのは私たち下請けなのに、なぜたった1度放水した自衛隊やハイパーレスキュー隊ばかりが大きく報道されるのか」という不満が現場では多く聞かれたという。現場は、事故の混乱で道具が足りず、長靴がないときはビニール袋と靴下を何十にも足に巻き建屋に入ったことや正しいマスクの着用方法の教育もないまま現場に行かされた作業員の実態を報告。事故収束作業の工程表は安全性より工期を優先していた。「絶対間に合わない」との現場の声は無視されたという。

花島さんは、研究者の立場から原発に対する「不満」について語った。

  1. 今回の福島第一原発の事故に関し「直ちに健康に影響はない」と専門家は言っているが、低線量の被曝の影響はまだよくわかっていない。わからないから科学的根拠はない(つまり影響はない)と考えるのはおかしい
  2. 地震・津波と原発事故について以前から警告していた研究者はいたので、「想定外」というのは間違っている
  3. 責任ある人が被曝せず、下請けの社員ばかりが被曝するのはいかがなものか
  4. 原発労働で亡くなってもなかなか労災と認定されず、裁判でも勝ちにくい。被曝が原因の病かどうかわからなくても、きちんと調べる体制を整えてほしい

など、以上の4点を述べた上で、何でもカネに換算して儲けることを考える社会では決して良くはならないと訴えた。活発な質疑の後、コーディネーターの河添誠さん(首都圏青年ユニオン)が、「私たちがまず原発の裏に労働者の貧困問題があることを知り、多くの人に事実を広めていくことが大事なのではないか」と述べ、討論をまとめた。

(首都圏青年ユニオン http://www.seinen-u.org/
日本マスコミ文化情報労組会議 http://www.union-net.or.jp/mic/ )]

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分科会 [教育]

「お金がなくても学校行きたい」に応える社会へ
~見直したいローン《奨学金》 高校生にも《就学援助》を~

「3・11」は、教育の分野でも、新自由主義改革で痛めつけられている困難をあぶり出され、6人の報告からも「貧困」の現状と課題が明らかとなった。参加者は約80人。

◆鈴木敏則さん(日高教/前:埼玉県立高校定時制教諭)
定時制高校生のためには、バスは走らなかった。計画停電で、授業そのものができなかった日も。しかも、彼らが勤めていた企業が被災し、雇用が切られるという大変厳しい状況に置かれている。
被災地に限らずダブル、トリプルワークの子は増え、借金を抱えている子もたくさんいる。いくら家計に入れるかで兄弟喧嘩になってしまう家もある。生徒たちの9割が非正規雇用、早あがりさせてくれないどころか、残業を強いられる生徒も多いのが現状。文科省の発表では、公立全日制の場合、学習費の総額は51万6184円。高校にも就学援助が必要だ。

◆佐藤恒さん (福島県内小学校事務職員/制度研)
震災後、福島の生活は大きく変わった。3月いっぱいは歩いて通った。三春町は被害が少なく、例年通りの新年度がスタート、原発事故から避難した児童15名を迎えた。卒業生の保護者が文房具などをそろえてくれ、人の温かさを感じた。教育費が無償だったら、着の身着のままで避難しても、安心して学校に来ることができただろう。
半年以上が過ぎ、町教委は通常の教育活動に戻そうとしているが、状況は何一つ変わっていない。震災以前からあった子どもの貧困や、情緒的幸福度の低さに表れる心の貧困などの課題は、より鮮明になった。どの町、どの地域に行ってもお金の心配をさせないための学校へ課題が見えてきた。

◆大浴圭太さん(大学生/あしなが学生募金事務局)
あしなが学生募金局は、親を亡くした子どもたちへの修学支援をしている。
病気で苦しみながら死んでいく親の姿をみていたり、自殺の現場を見てしまったりして受けたストレスには計り知れないものがある。言葉で表現することが出来れば、ストレスは軽減できるが、子どもたちはそれを表現する術を知らないので、ストレスを抱え込んでいる。境遇を同じくしている人と出会い、話せる場が必要だ。

◆岩崎祐輔さん (大学生/学費ゼロネット東京)
学費負担で苦しむ人をゼロにしようと活動している。学費が高額で、大学に進学できない、大学生でも、お金がなくて昼食を食べられない人がいる。奨学金が充実していない。卒業しても就職もないような今の社会状況では給付型でないと、返済が心配で借りられない。

◆土屋ゆかりさん(東京都社会福祉協議会/高校進学のための情報支援構築PJ担当)
どうしたら必要としている人に情報が届くのかが課題。『拝啓中3のあなたへ』という冊子を作り、都内の中学に送付、担当の先生から応援@というメッセージを込めて手渡して欲しいと思っています。
困った時に電話する窓口がないのも課題。生活保護世帯の全日制高校への進学率は7割弱。経済的格差と教育格差が複合的に絡み合っている。

◆岡村 稔さん(学支労書記次長/「奨学金の会」事務局次長)
日本の学生支援制度は奨学金とは呼べない、受益者負担のローンになっている。返還金の回収が強化された。6か月以上の延滞をしている人の87、5%が、年収300万未満の若者だ。
被災生徒、被災学生の数に比べ奨学金を借りたいという人が少ないが、「これ以上借金ができない」と進学を断念している。一昨年から、有利子で50万まで借りられるようになった。返済金が、家賃より高くなっている人もいる。教育は「人権」。2012年の概算要求に高校・大学などの給付制奨学金創設予算が計上された、声を上げ歯車を動かそう。

会場からも以下の発言があった:
1.取り組みの結果、宮城県独自の奨学金は給付制になった
2.神奈川県私学助成をすすめる会から、学費が未払いで、卒業できない子どもがいる
3.奨学金の返済についての裁判をかかえているが、サラ金より悪質だ
4.校則で禁止されているアルバイトをしている高校生から、「ぼくの高校の授業料は祖母が出してくれています。学校へ行っていていいのかと思っていました。でも、こんなに真剣に奨学金などのことについて考えてくれている大人もいることに感激しました。いい社会になって欲しいと思う」。

(なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク http://end-childpoverty.jp/
全国進路指導研究会 http://homepage1.nifty.com/zenshinken/
反貧困ネットワーク埼玉 http://antipovertysaitama.web.fc2.com/

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分科会 [対談]

原発震災 ~怒り、不安、悲しみのなかで生き抜くために~

この日が初対面の森川さんのことを知ったのは、ある衝撃的な調査結果の報道でだ。

その調査結果とは、「都心に暮らすホームレスの約3割に知的障害の可能性があり、約4割にうつ病やアルコール依存症などの精神疾患がある」というもの。

病気や障害と、貧困。私自身も派遣村などで出会った人がその後生活保護を受けられるようになり、そのことによって医療に繋がった結果、知的障害があることがわかったといった話をいくつか聞いていたので、この数字には驚きつつも、腑に落ちるものがあったのだった。ホームレス問題には、時に「発見されてこなかった障害」の存在がある。そしてそのことが失業や職場でのいじめなど、「生きる困難さ」に繋がっていたことは想像に難くない。

そんな調査をした森川さんは、精神科医であり、ホームレス支援にかかわってきた。また、3・11以後は岩手の大槌町でメンタルケアに携わっているという。

この日の対談では、そんな森川さんのこれまでの活動に加え、被災地での「心のケア」について話をうかがった。

アルコール依存症にも取り組んできた森川さんは対談の途中、観客にこんな質問をした。

「被災地に支援物資としてお酒を送った方がいいと思いますか? 送らない方がいいと思いますか?」

被災した人が、個人として顔が見えているなら判断はまだ簡単だ。しかし、「被災者」とくくると問題は複雑になる。観客の判断は二分したが、結果的には「わからない」に多くの人が手を挙げた。「生きる力」にもなるお酒と、依存症の問題。回答は誰にもわからない。ただ、「お酒がそんなに必要なほど辛い状態ならむしろ自分が行く」という森川さんの言葉が印象的だった。

後半には45分ほどの長い質疑の時間をもうけ、有意義な議論の時間となった。
反貧困集会には珍しく、何か「癒し」系の対談だったのだった。

(週刊金曜日 http://www.kinyobi.co.jp/

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分科会 [女性非正規]

廃案にさせない労働者派遣法改正 ~今こそ訴えたい、女性の非正規労働者問題~

今回の「女性非正規」分科会のオープニングは、「女たちは派遣を望んでいない」を旗印にした集会・デモで歌ってきた栗田隆子さん作詞の「TRAIN-TRAIN」の替え歌「♪派遣協会 あなたたち 仲良く地獄つくってく いい奴・悪い奴みんな 地獄をつくらされてゆく~」をブレーメンの音楽隊のごとく、軽快なタンバリンのリズムに合わせて楽しくコーラス。

小教室だし、参加者が10人程度ならば「かたりれん」スタイルで、ざっくばらんに語り合おうか?と申し合わせていたが、歌っているうちに、続々と参加者が入場。36席しかない小教室に、40人以上の方が見えられ、立ち見の方も。法廷だったら、「立ち見はできませんよ」と裁判官に追い返されてしまうところだろうか。

コーラスの後は、国会での審議がストップしてしまっている労働者派遣法の改正にしびれを切らした派遣労働者中心に、待望のパネルディスカッションを開始した。

前座は、「あなたの仕事は派遣でもできる。派遣ならば、給料も安いし、すぐクビを切れる」と会社上司に脅されたうえで、賃下げの提案を出され、2割の賃金カットに合意させられたが、もともと低い給料で生活困窮するという事態になったため、撤回を求めユニオンで団体交渉中の松田さんを私(藤井)がインタビュー。派遣の存在を利用して、正社員女性を雇用不安に陥れ、賃金カットに合意させたり、退職強要したり、非正規雇用に転換させたりするという会社のやりたい放題は、松田さんの会社だけではなく、日本中のいろんな会社で展開されているのではないか。地獄の扉を開かせてなるものか!松田さんの怒りの爆弾は、労働組合対策を看板に掲げた社労士相手に会社との団体交渉の場で炸裂しているという。

続いて、「シングルマザーで同じ派遣先に11年」の宇山さんから、3ヶ月更新でえんえんと続く、苦節11年の地獄の派遣ライフが語られた。「専門業務以外の業務でも頼まれれば雇い止めの覚悟なしには断れないため、次々と追加されること」「時間外労働月100時間にせまる月が6ヶ月続いたこと」「過労による労災事故の発生-救急車にて搬送される」「ボーナス時期に社内で社員がはしゃぐ姿を見せ付けられること」「お祝い事はともかく、身内の弔事に関する悲しみや痛みは誰でも同じようにあるのに、慶弔休暇がないこと」など数え上げればきりがない差別の数々。同じ職場で同じ仕事をしている労働者なのに、果てのない献身ばかりを求められ、一切の見返りがない派遣労働者の実状を赤裸々に語ってくれた。宇山さんのケースは氷山の一角にすぎない。日本じゅうの派遣労働者が、こんな理不尽な差別に苦しんでいるのだ。

そして、御堂さんから、今まで派遣された現場で目の当たりにした正社員代替等の実状報告があった。正社員の仕事→契約社員・パートタイマーの仕事に→辞めていくパートタイマーの不足分を日雇い派遣で補うという形で進んだというもの。

また、所定労働時間が3時間カットされたのに、一人当たりの作業の分量・ノルマが同じという現場も経験。作業をサボらせまいと「怒鳴りながら」ハッパをかける正社員に、必死にスピードアップを図る非正規社員。映画「モダンタイムズ」のような光景が目に浮かぶようだった。

その後、宇山さんが、労働者派遣についての当初の目的、「改正」の経緯、問題点などをわかりやすく解説。労働者派遣をめぐる日本労働弁護団、学者、労働組合界、財界などの論調を分析し、同一価値労働同一賃金(ペイエクィティ)・ディンセントワーク・持続可能な雇用システムの構築を力説した。

その後、会場からの質問・発言を求めたところ、次々と手があがり、さまざまな質問・異論反論等が飛び交い、会場は熱気に包まれ、時間いっぱいまで続いた。特に、20代、30代と思われる女性からの質問が多かった。それだけ働き方についての関心が高いのだろう。

現行の労働者派遣法では、派遣会社や派遣先会社の違法行為のしわ寄せが派遣労働者に押し付けられるばかりで、働く権利も人権さえ守られてはいない。今後とも規制緩和ではなく、法規制強化を主張していきたい。

〈コーディネーター〉藤井 豊味〔女性ユニオン東京〕
〈パネラー〉宇山 洋美〔働く女性の全国センター〕、松田 美代子、御堂 由縁理〔女性ユニオン東京〕
〈歌とタンバリン〉クロネコ・シロネコ〔女性ユニオン東京〕
〈撮影&会場係〉伊藤みどり〔働く女性の全国センター〕、新田典子〔女性ユニオン東京〕/しんちゃん(友情出演)

(女性ユニオン東京 http://www.f8.dion.ne.jp/~wtutokyo/
働く女性の全国センター http://wwt.acw2.org/

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分科会 [精神障害]

精神障害者の排除・隔離拘禁を問う

福島県では原発事故により4つの精神科病院(約800床)が閉鎖し、精神科医療が崩壊しました。そして入院していた患者は他の病院に散り散りとなりました。

この事は、閉鎖した病院の一つである双葉病院が起こした40名以上の死者を出すという一大惨事として週刊誌等のメディアで取り上げられ、遠隔地に住む我々も知ることとなりました。

しかしながら、実は入院患者より遥かに多くの外来通院者が存在し、彼らの生活を守るため地域で支援をし続けた福祉事業所があった事はあまり報道される事はありませんでした。

ひまわりの家の活動

そこで本分科会では、震災翌日から不休で利用者の支援をし続けた福島県相馬市のNPO法人「ひまわりの家」から職員の山下さん、漆山さんを招き、震災直後から現在までの現地での出来事を報告して頂きました。

更に、双葉病院事件が露呈させた日本の精神科病院の隔離・収容主義の実態について、「精神医療に葬られた人びと」著者の織田淳太郎さんを招き、議論を行いました。

最初に司会の渡辺より、日本の精神科医療が世界でも最も多くの病床、最も長い入院日数を誇ること。年々閉鎖処遇、隔離・身体拘束が増加している現状を参加者全体で確認しました。

続いて行なったひまわりの家からの報告では、驚くべきことに病院が閉鎖する際、病院側からは何の知らせもなく、数日後に保健所からその事実を伝え聞いたそうです。その際の現場の混乱と失望感を切実に語って頂きました。更に注目すべきは、この様な緊急事態に於いてひまわりの家では震災直後に入院した利用者は一人もいなかったというのです。それは精神科病院なしで地域生活を支えていけるということをひまわりの家は証明したと云えます。

織田淳太郎さんからは、双葉病院事件について改めて解説して頂きました。そしてこの事件の問題の本質は、死者の人数や避難の仕方などにあったのではなく、なぜ精神科の病院にすぐに亡くなってしまうような状態の人達が入院していたのかということではないか。また、この様な病院の運営が法制度上可能であるということは、果たして双葉病院だけが取り分け劣悪な病院だったのかは疑問であるとの指摘がされました。

参加者からも質問だけではなく、精神科医療が抱える問題について活発な意見が出されました。

最後に、無くなった精神科医療の再建について、新たな病院の建設ではなく、病院に変わる地域支援システムの構築が求められていることを参加者全体で確認しました。

(青森ヒューマンライトリカバリー http://www.geocities.jp/humanrightsrecovery/
医療観察法許すなネットワーク )

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分科会 [住まい]

被災地での住宅・住居支援

まず福島県の復興計画の策定に関わっている鈴木浩さん(福島大学)に講演をしていただきました。

鈴木さんは福島県の復興ビジョンの基本方針として、まず「脱・原発依存」、「自然エネルギーの推進」を掲げることになった経緯について説明し、それに対して野田首相が国連演説で「原子力の安全性を世界最高水準に高める」としたことを福島の思いに逆行するものだと批判しました。

また、福島県の木造仮設住宅の取り組みなどを紹介し、長期化が予想される避難生活における「生活の質」を確保していくことが求められているとお話されました。

そのあと、福島の子どもたちとの共同制作絵画プロジェクトを進めている英国人画家のジェフ・リードさんが発言しました。ジェフさんは3年前から福島県に暮らしていましたが、現在はご家族とともに関西に避難されています。

ジェフさんは福島の子どもたちが置かれている状況を説明し、「自分も福島を愛しているが、今は子どもたちを守ることを最優先して、避難を進めるべきだと思う」と発言されました。

最後に東京災害支援ネット(とすねっと)で広域避難者の支援をしている信木美穂さんが発言し、とすねっとの活動を紹介しながら、福島から首都圏に避難されているご家族の状況を説明し、きめ細かい支援の必要性を訴えられました。

会場からは南相馬市から避難されている方の発言もあり、活発な質疑応答がなされました。

原発災害により多くの人々が「住まい」と「ふるさと」を奪われています。この現実を重く受け止め、安心してくらせる居住環境を取り戻すために何が必要か、今後とも考え、行動していきたいと思います。

(住まいの貧困に取り組むネットワーク http://housingpoor.blog53.fc2.com/

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分科会 [災害と女性]

女性と災害について考える ~アジア、アフリカ、日本の現状から~

今回の分科会では、国籍や状況、災害被害は違えども、復興を目指して活動している3人の女性達そしてしんぐるまざあずふぉーらむの大谷さんを迎えトークイベントを開催した。会場への集客は常時ほぼ満席であった。

まずは大谷さんより東日本大震災支援に置ける同団体活動紹介をして頂き、被災地における女性の生活を説明して頂いた。大規模避難所における女性スペースの必要性、仮設住宅における孤立化防止、メンタルヘルス予防活動としての手芸の促進、パープルホットラインなど多岐に渡る活動を紹介。これら支援活動、被災地の女性を取り囲む生活環境を知った上で、福島県で被災された女性と大谷さんのインタビュー式対談に移った。女性は3月11日大震災発生当時からのご自身の経験を振り返りながら熱く語って下さった。緊急時はたくさんの外部支援を受けて助かったが、今も尚、生活面で困っている。特に金銭的な心配を抱えながらも3人の子どもたちを育てていかなくてはならない現状、これから果てなく続く日常生活への不安などを包み隠さずに話して下さった。

海外で津波被害から立ちあがった経験を共有

海外からのゲスト、スリランカのバサンタカラさんは自ら2004年スリランカ津波の被災者であり、今回の東日本大震災における全被災者に対し哀悼の念を示し、自身が現在スリランカで行っている地域活動についての紹介を行った。女性である事の苦難、それをどのように乗り越えて活動家として今まできたのか、会場から質問があったGBVから地域女性を守る活動などを紹介。会場の参加者から多数の質問が飛んだ。また、南アフリカ共和国から参加のローズ・タマエさんはご自身の活動の紹介を行い、ご自身の身の上に降りかかった恐ろしいGBV、レイプ体験、HIV感染などをお話し、南アフリカ社会の中でHIVポジテイブ、そして女性として生きていくことの大変さを話して下さった。そして国籍、状況は違えども、どんな時も女性は自身や子ども達を守る為に立ち上らなくてはならず、またそれは個人がばらばらに活動しても効果はなく、女性が立ち上るのならば有志を募ってともに活動していく連帯感が必要なことを話してくださり会場内の一体感を生んだ。

分科会全体を通して見ると、時間的にも余裕があり、各人からの話がたっぷり聞く事ができ、充実した会と成ったのではないだろうか。若干会場からの質問が少なかった事、また海外からのゲストに話が集中してしまう傾向にあった点が反省点として挙げられるが、終始赤石さんの司会によって和やかな雰囲気で分科会を執り行う事が出来たと言える。

司会:赤石 千衣子〔しんぐるまざあずふぉーらむ〕
出演者:大谷さよ子〔しんぐるまざあずふぉーらむ代表〕、
東日本大震災被災者 女性〔日本〕、
ローズ・タマエさん〔南アフリカ共和国〕、
ニャーナセルバム・バサンタカラさん〔スリランカ〕

(動く→動かす http://www.ugokuugokasu.jp/
しんぐるまざあず・ふぉーらむ http://www.single-mama.com/

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分科会 [保育]

どうなる?障がい児保育と新保育制度(応益負担)
1、分科会趣旨

障害者自立支援法や改正児童福祉法により、障害児福祉に直接契約制度、応益負担、日額報酬制が導入された。今政府は、公的保育の解体・保育分野を市場化にさらす新保育制度(子ども子育て新システム)を導入しようとしている。障害児福祉の現状を保護者・施設職員・研究者からの報告を受け、新保育制度(子ども子育て新システム)導入された場合の障害者保育の問題を考える。

2、報告

◆保護者報告:聾唖者の子どもをもつ保護者
検診ですこし聞こえ方が悪いかもしれない様子を見てみましょうという診断や、子供の障がいを受け入れたくない気持ち、そして次の検診まで間隔が長いということもあり、後手後手になってしまったことは否めない。福祉課の対応が悪く自分から動かなければならないことを痛感している。また、成長する子どもにあわせ福祉機器も買え換えが必要で、それがまた高額であることは負担が重かった。
◆施設職員報告:児童デイサービス勤務保育士
児童デイサービスは、直接契約制度、応益負担、日額報酬制を骨子とする障害者自立支援法で運営されている。当初利用者1割負担が原則であったため、退所者や当園日数を減らすなどの費用負担回避の動きがあった。それにより、子どもたちが終日自宅で過ごさざるを得ない状況もおこり、発達支援の観点から大きな問題となっている。また施設側は登園児童数の毎日の増減によりそれに応じた職員数の確保におわれ継続的な支援がしにくくなっている。
◆研究者報告:立正大学中村尚子准教授
現在の通園型障害児施設は障害者自立支援法適用と児童福祉法適用の2本立てに分かれているが、来年4月より改正児童福祉法に一元化される。改正児童福祉法は契約制度、応益負担、日額報酬などの要素を含んでいるが今は軽減措置が働いているので本質が見えない。今後、新システム導入により軽減措置が撤廃された場合、障がいを持った子供や保護者に大きなしわ寄せが起こることは明白である。

3、今後の課題

新保育制度(子ども子育て新システム)のねらいの一つは、女性を労働市場に積極的に参入させることである。現在は障がいのある子供がいるため就労できない場合であっても、他の兄弟は保育所に入所ができる。しかし、上記のねらいが貫徹されるならば、入所が困難になる可能は非常に大きい。政府の審議会では、新システムと障害者保育の論があまりされていないので白紙状態である。だからこそ今、障がい児が保育所に入所できる根拠を市町村に明文化させることが必要である。 

(ほうんネット)

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分科会 [キッズスペース]

今年の集会は屋内ということもあり、昨年のような「ヒンキーすくい」のようなおまつり遊びができないぶん、遊び道具を増やしました。内容は、ヒンキーをさがせ・ヒンキーぬり絵・ヒンキーボウリング・迷路・ビーズ細工・バルーンアート・ねんど・ポンポン毛糸などでした。

当日は、会場準備のときからお子さんが参加してくださってうれしかったです。また、寝ころべるスペースは、おむつ交換も楽にできるしお昼寝もできるし(天使の寝顔に癒されました!)、準備してよかったなぁと思いました。あるお母さんから、「なかなか自分から楽しいと言わない子なのに今日はとっても楽しかったと言ってました」と言われたのは感激でした。予想外だったのは、大人のみなさんが利用されたことです。

全体会や分科会で疲れてしまった方たちが、ちょっとひと息ついていかれたり、遊んだりしているのを見て、こういう場は子どもだけでなく、大人にも必要だと感じました。利用された方たちが、後かたづけに参加してくださったこともありがたかったです。

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全体会2 シンポジウム「生きるために必要なこと」

午後3時から90分間、「生きるために必要なこと」と題して、シンポジウムが開かれた。パネリストは、宇都宮健児(反貧困ネットワーク代表)、中下大樹(僧侶)、鈴木浩(福島県復興ビジョン検討委員会座長)、竹信三恵子(ジャーナリスト、和光大学教授)の諸氏。コーディネーターを私が務めた。

 冒頭、パネリストから震災後7ヶ月の現段階における総括を伺った。原発事故による生活破壊、孤独死、非常時に強化されるジェンダー役割分担など、予想通り厳しい現実についての認識が語られた。震災は、平穏な暮らしを破壊して新たに貧困を生み出す側面があると同時に、震災前からある貧困をあぶり出す面がある。さらには、「そんなこと言ってる場合じゃない」というマッチョな掛け声の下、以前からある抑圧をさらに強化してしまう側面すらある。

それに対して、これから長く続く復興過程で私たちが注意すべき点は何か。一方で「支え合い」が叫ばれ、それ自体が望ましいものであることは誰も否定しない反面、公的責任の撤退、場合によってはさらなる規制緩和など、さまざまな「便乗」のおそれも語られた。また、そうした復興過程に対する多様な住民参加の保障についても、その必要性が語られる一方、楽観視できない状態にあるとの指摘があった。日弁連は「人間の復興」を謳っているが、それはどのように実現すべきか。また、たくさんの「死」から学ぶこと、住居を始めとした人々の「生活の質」を維持する方策はあるのか。

具体的な例示として印象に残っているのは、「私たちの人材リストをつくろう」という提案だった。復興計画の策定過程から、ともすると住民たちは取り残されてしまう。特に女性、子ども、障害者といった「マイノリティ」はそうだ。しかし、そうした声はいつも「○○委員会に呼べる人材がいない」と「反論」される。行政に見えていないだけで、私たちの周りにはたくさんいる、というのであれば、そのリストをつくり、いろんな場面で提示して回ろう、という提案だった。

今後の復興過程における注意点については、会場にも意見を求め、100を越える意見が集まった。生活保障や多様な住民参加を求める声が多く、その課題に対する問題関心の高さが窺われた。

発災から8ヶ月が経過しようとしているが、復興過程はまだ始まったばかり。関心を持続することの難しさを肝に銘じながら、これからもそれぞれの立場で役割を果たし続けることが重要だと思う。私も貧困問題に関心を寄せる立場から、復興過程からとりこぼされる人たちが一人でも減るよう、コミットしていきたい。

湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)

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集会宣言

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