貧困ジャーナリズム大賞 2011

貧困ジャーナリズム大賞

水谷 豊(俳優)、櫻井 武晴(脚本家)
テレビ朝日 ドラマ「相棒 Season 9 ~ボーダーライン」
ニュースが伝えきれない貧困のリアリティをドラマが伝えた。正社員になれない派遣の男性が結婚も失敗。派遣切りの末、自殺に追い詰められる。あちこちで起きている惨事を迫力満点に描いた。特に「水際作戦」と呼ばれる生活保護での拒絶的な窓口応対や困窮者が試食品を食べて空腹をしのぐ極限状況などの描写は見事。丹念な取材を元に再構成した脚本がドキュメンタリー以上にリアリティを深めた。死んだ者を救えたボーダーラインはどこにあったのか?社会のありかたも含め、番組は視聴者に問いかける。困窮者の境遇に思いを馳せながら謎に迫っていく水谷豊の抑制的な演技も胸に迫る。現代の貧困を多くの視聴者の心に刻んだ歴史的なドラマ作品だった。

貧困ジャーナリズム特別賞

安田 浩一(ジャーナリスト)
「ルポ 差別と貧困の外国人労働者」など安田氏の一連の外国人労働者報道
外国人の労働力が社会の隅々まで浸透している日本。しかし、そのことは「見えないふり」あるいは「見えぬもの」として放置されてきた。安田氏は「外国人研修・技能実習制度」の暗部を、優れたルポルタージュでいち早く告発、その後も日系ブラジル人を中心とした外国人労働者の問題を追い続けてきた。彼らを取り巻く差別と貧困の現実は、日本社会の問題をも鋭くえぐり出す。「目をそらすな」。発表されたルポの数々の行間から、安田氏の叫びが聞こえる。彼の作品は、間違いなく問題の可視化を進めた。

加藤 高太郎(中京テレビ)
NNNドキュメント’10「寝たきりアパート ~さまよう終の棲家」
東海地方を中心に広がる「介護アパート」。高齢者を預かって栄養チューブにつないでベッドに寝かせっぱなしにする。本人負担はなく医療費不正請求で帳尻を合わせるという新手の貧困ビジネスの問題をスクープした。現行法では行政は介入が難しい。実際に老人を預けたいという家族のニーズはある・・・。そんな介護の現実を突きつけた。

貧困ジャーナリズム賞

日野 行介(毎日新聞大阪本社社会部)
「ルポ2010 絶望の先に~派遣切りその後」(計8回の連載)
2008年、年末に製造業務派遣で働く労働者が大量に雇い止め(派遣切り)にあった。職を失い、住居を追われた労働者の実態は「年越し派遣村」という形で可視化され、多くのメディアが取り上げた。あれから3年、時の流れに沿うかのように、派遣問題に関する報道は減った。派遣村で〝約束〟された労働者派遣法の抜本改正はいまだに実現していないのにだ。当時から派遣問題を追い続けた日野記者は、労働者たちの3年を追い、彼らの今を伝えた。「忘れないこと」がメディアの大事な仕事であることを、これらの記事は教えている。

「ひとりじゃないよ」取材班 大西祐資・他(京都新聞社)
「ひとりじゃないよ」(3部、24回連載)
高齢者、学齢期の子ども、母親と社会の中で孤立する人々の現実と、そうした人々を支援する動きを追った長期連載。3部を通して、孤立の背景に家族関係、貧困が浮かび上がる。記事はそれらを丹念に描くが、それだけでは終わらない。支援の動きも同様に追いかけ、解決策を読者とともに考える仕立てになっている。貧困を中心とした現代の問題点をしっかりと見据え、「新たなつながりの構築」まで踏み込んだ内容は意欲的で、新たな貧困報道の可能性を示した。

「子ども貧国」取材班 星浩・他(中日新聞社)
「子ども貧国」(第1部 2011年1月1日~1月10日)
子どもをめぐる貧困の実態を、元旦から伝えた。徹底した現場取材、そして、子どもの表情まで目に浮かぶような丁寧な描写が、心をうつ。悲惨な現実だけでは読む側もつらくなるが、時折ほっとするようなエピソードもあり、最後まで読ませた。社会部らしい仕事に拍手。年間を通じて連載してほしい。

初田 実、奥田 敏、清水 ただし(ラジオ大阪)
「ラジオ派遣村」
年越し派遣村が日比谷公園で行った「生活相談」「労働相談」をラジオを通じて再現するユニークな試み。派遣切りされた男性、生活苦のなか子育てする母親、障害を持ちながら働く男性などから次々に寄せられる切実な声、声、声。そうした声を集め、双方向に悩み相談する「場」を作り上げた。「ラジオは弱者のために」という制作者の覚悟が伝わる。放送中止になったがぜひ再開してほしい。

「子どもと貧困」取材班 荻野悦子、染矢ゆう子(赤旗社会部)
『だれかボクに、食べものちょうだい』(新日本出版社)
子どもの貧困、そして親の貧困を、ほかのメディアにさきがけて伝えた。2009年1月から2010年3月までの連載に加筆・再構成して出版。「食べ物ちょうだい」と道行く人にねだっていた都内の小学4年生の話は強烈だ。そんな子ども達の姿や、食べ物はあっても「ひもじい思い」を抱えている子どもの共通の叫びをタイトルにこめたという。記者は二人とも子育て中の母親。寄り添うような文章が光っている。

白石 草(OurPlanet-TV)
テレビなど大手映像メディアが扱おうとしない貧困のテーマをネットテレビという新しいメディアで積極的に発信。貧困問題に関わる様々な集会をそのまま生中継し記録映像をネットにアップ。特に東京・渋谷の宮下公園ナイキ化反対や生活保護法改正反対などで活動家の主張を収録。ワンクリックでいつでも見られるようにするなど、報道でユニークなジャンルを開拓した。

土屋トカチ(レイバーネットTV)
インターネット上に世代を超えて楽しく貧困問題を語り合う「場」を作った。
中でも若者が労組などのベテラン活動家に率直な質問を浴びせる「教えておじさん」のコーナーは人気が高く、ファンが急増中だ。かつてのラジオのDJ番組風に楽しく見せる工夫もして、貧困問題をより身近なものにした。

 

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