貧困ジャーナリズム大賞2017

貧困ジャーナリズム大賞

該当作品 なし

貧困ジャーナリズム特別賞(2作品 以下、順不同)

大麻俊樹・浅田環・林きよみディレクター、中野淳アナほか(NHK「ハートネットTV」担当)
「障害者施設殺傷事件から1年」のシリーズ(7月24日-26日)など
 ハートネットTVでは障害者施設での殺傷事件直後から課題について様々な角度から光を当て特集してきた。事件からちょうど1年経過した3回連続の特集は、被害者の側、障害者運動の歴史、さらに障害者が生きる価値は何かに焦点を当てた。特に3回目の生放送はツイッターなどの視聴者の赤裸々な本音を紹介して伝える挑戦的な放送を試みた。
「障害者は生きる価値がない」という容疑者の言葉が、実は社会全体にも共有する人が少なくない現状を伝え、課題克服のために私たち自身がしなければならないことを深く問いかける内容だった。事件から1年後の特集は数多いなか出色の放送といえた。

高崎園子記者、座安あきの記者、榮門琴音記者(沖縄タイムス学芸くらし班)
沖縄タイムス連載企画「『働く』を考える」など「子どもの貧困」の背景にある親の低賃金や長時間労働に関する一連の報道について
「子どもの貧困」が注目され、それへの対策が多く語られるようになっているが、その背景にある親の貧困を労働の側面から迫っている。非正規/正規の双方ともに深刻な問題を抱えていることが詳しくルポされており、また、沖縄が特にひどい状況にあることがデータでも詳細に叙述されている。解決策として、労働組合に加入して権利主張することも叙述されており重要である。貧困と労働との関係を考えるうえでも、また、沖縄という地域の貧困を考えるうえでもきわめて貴重な長期連載である。

貧困ジャーナリズム賞(7作品 以下、順不同

高橋裕太ディレクター、新井直之ディレクター(NHK)
NHKスペシャル「見えない“貧困”-未来を奪われる子どもたち-」(2月12日放送)
理解されにくい“貧困”の概念。放課後に家計を助けるためバイトを掛け持ちする女子高生や母親を手伝い家事に励む女児など当事者ルポに加え、全国の自治体で始まった実態調査や最新データ、研究成果を示した。子どもに新しい服や靴や本、運動用具を買えないなど「できないこと」を“剥奪指標”として数値化。スマホ等のコミュニケーション道具では差がない反面、本を読む、家族旅行に行く、学習塾に通う、誕生日を祝うなど「経験」では標準家庭と貧困家庭で格差が広がる実態が判明した。スマホの所持などでは一見「ふつう」を装う子どもたちの“貧困”の実相を可視化させた意欲的な放送だった。

伊集院要ディレクター(NHK)
NHKスペシャル「ばっちゃん-子どもたちが立ち直る居場所-」
貧困層が比較的多い広島・基町地区で、非行少年たちに「夕食」を食べさせる活動を30年以上にわたって行う中本忠子さん(83)。刺青、暴力団、麻薬、性的乱れ、犯罪などが日常茶飯に存在し、世代を超えて貧困が連鎖する。刺青が入った少年の親をみれば、やはり肌に刺青という救いがたい現状も描かれる。「空腹になるから子どもは犯罪に走る」と食事を提供する中本さんに対し、子どもたちも「裏切れない」と心を許す様子が伝わってくる。孤立しがちな子どもたちをつなぎとめ、立ち直りの場となる“居場所”。少年院に入っていたマコトがかつて「食堂だ」と呼んでいた中本さんの家を「ばっちゃんの家」と呼び変えた場面は印象的だった。非常にデリケートなテーマながら丁寧に取材を繰り返し、当事者の信頼を獲得して本音を引き出したインタビューには説得力があった。

斉加尚代ディレクター(毎日放送)
映像‘17「支えて、支えられ-生活保護の現場と『みさ姉』-」(3月26日放送)
尼崎市で生活保護の現場で嘱託として就労促進相談員を務める「みさ姉」を通じて生活保護という支えについて問題提起した。国が基準を切り下げるなか、いざとなった時に困窮者を支えている実状を伝えた。生活保護は偏見やバッシング感情が根強く、「みさ姉」は相談員として受給者を「支える」側であり、彼女自身も自閉症の子どもを抱えて働くシングルマザーでもある。受給者との相談風景では「みさ姉」の豊かな表情に着目して撮影する手法で、顔出しが困難な分野での「支え合い」を見事に伝えた。

真鍋俊永ディレクター(関西テレビ)
ザ・ドキュメント 「そよ風が残したもの-障害者殺傷事件の波紋-」(1月28日放送)
季刊誌「そよ風のように街に出よう」が40年近く牽引してきた障害者の自立運動。障害を持つ人の個性も尊重しようという理念は次第に初期の熱気が薄らぎ、メッセージが通じにくくなったことを当事者たちも自覚する。相障害者殺傷事件が問いかけるのは、犯人一人に帰結させるべき問題でなく、社会全体が障害者をどう考えていくかという問題だ。様々な障害者のリアルな姿が彼らの人生の価値を雄弁に物語る佳作だ。

国枝奈々記者(共同通信金沢支局)
非正規公務員の労災についての一連の報道
公務分野での非正規職員との賃金、休業の格差などは、これまでも報道がなされてきた。しかしながら仕事上の病気などを公務災害として認める自治体は少なく、多くの非正規労働者は泣き寝入りしている現状についての報道はほとんどなかった。公務分野での非正規職員に対する労災分野での制度的差別について労働者の立場から報道した功績は大きい。

小林明子(ニュース・エディター)、渡辺一樹、籏智広太ら(「BuzzFeed Japan」編集部)
「3人に1人の子が貧困 沖縄」、「貧困に陥ったLGBT」、「給食に救われる子どもたち」「直接手渡す『こども宅食』は子どもを救うか」、「コンビニドライバー」、「低収入・低学歴ほど危険な受動喫煙」など貧困にかかわる一連の記事
 インターネットメディアの自在さを活用して、現代人が直面する様々な貧困の断面をルポ。既存のメディアが書いていない切り口で多様な形で取り上げたことは、何かと「○○シリーズ」で括りがちなステレオタイプと違う形の報道スタイルがありうることを示した。住んでいる地域によって公立中学での給食の実施率が大きく異なり、格差が生じている実態、LGBTも“どの性”なのかによっては理解されにくい貧困の傾向があること、沖縄ではデータだけを見ても本土の倍以上の割合の「子どもの貧困」が広がっている実態、コンビニの配送ドライバーという仕事で長時間労働が慢性化し、食事時間もままならず過労死に至ったケースもあること、低収入・低学歴の人ほど受動喫煙のリスクが高いことなど、いろいろな断片から、さまざまな貧困のリアルがあることを伝えた。

岡部統行ディレクター(ドキュメンタリージャパン)
テレビ東京「ガイアの夜明け」【密着!会社と闘う者たち 第2弾(7月25日放送)】
「しゃぶしゃぶ温野菜」のフランチャイズ店で働くバイト学生が4ヶ月間休日もなく、店長から「殺してやる」という脅迫まで受けて会社と闘うことになった。「アリさんマークの引越社」では運転手の男性が月300時間を超える長時間労働の末に自動車事故を起こすと不透明な明細の修理代を要求され、さらにシュレッダー係に異動になる。その後、懲戒解雇処分を受けて裁判で争う。労働組合として抗議活動をすると暴力団まがいの言葉で会社側が中止を求めてくる。労働問題の報道では会社名をボカす報道も多い中、社名を明示し、経緯を詳細に伝えた。裁判官も呆れて会社側に諭したという「シュレッダー係への異動の不自然さ」などをていねいに取材。ジャーナリスト精神をいかんなく発揮した。

 

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