【報告】参院選前集会「どうする日本の貧困問題」

  • 2013年07月08日
  • 投稿者:反貧困ネットワーク
  • カテゴリー:その他

6月30日に、参院選前集会「どうする日本の貧困問題」が開催されました。

開会の挨拶では、反貧困ネットワークの雨宮処凛副代表と、河添誠副代表がそろって登壇。雨宮副代表は、福島第一原発事故の関心が薄れつつある中で、低賃金で働く原発労働者の権利が守られていない。貧困の問題と原発労働の問題はつながっている。生活保護問題やブラック企業の問題なども含めて、政治家は弱者を切り捨てる方向を修正してほしいと語りました。河添副代表からは、参議院選はいろいろな争点があるが、この集会では、特に、貧困、社会保障、雇用の安定の問題などについて、各政党からの意見をうかがい議論をしたい、との挨拶がありました。

政党アピールでは、各政党からの出席者が、それぞれの思いを5分程度で語り、その後、会場からの質問に回答をしていただく形で議論がおこなわれました。(発言要旨は、この報告の最後に掲載してあります。)

閉会の挨拶では、宇都宮健児代表より、次のような感想が語られました。
今日は、これからの日本社会の方向を決める重要な論点が議論された。7月の参議院選挙は、これらの問題が参議院選挙の結果によって方向づけされる重要な選挙である。ひとりひとりの有権者、国民が関心を持って一票を投じることは、我々の重要な責任であるのではないかと思う。選挙に行っても社会は変わらないのではないか、国は変わらないのではないかと考え、投票に行かない人が増えつつあるのは、日本の民主主義にとって極めて残念なことであり、ある意味では危機的な状況であると思う。最近、本を読んでいたら「私たちは微力であっても無力ではない」という言葉と出会った。ひとりひとりは小さな力しかないが、それは無力でなくて、その微力をみんな集め、同じ方向に向けることによって、少しずつであるけど、社会を変えていけることができるのだ、という文章だった。この考え方は大切だと思う。反貧困ネットワークのメンバーひとりひとりも微力だが、無力ではない。まわりの人々に、この参議院選挙は重要な選挙だ。投票に行こうという呼びかけをしたいと思う。


【政党発言要旨など】
(以下、発言順に発言要旨を掲載。敬称略)
■まるこ安子(みどりの風)
「どんなふうに生まれてきてもいいよ。みんなで待っているよ」ということを、社会意識として広めていきたい。同時に、経済のこともしっかりと考えていきたい。本業はファッションデザイナー。被災地の福祉作業所などに古着を送り、パッチワークをつくってもらい、それを賛同ブランドが買い上げて商品にしていくという「つなぐ・つむぐプロジェクト」をおこなっている。このように、市民が様々なアイデアを生かしながら、垣根を越えてつながっていける交流の場をつくりたい。みどりの風が目指している循環型社会で、コンクリートではなく人や賃金へ反映され、会社や投資家ではなく労働者に給料が反映されるような社会をつくっていこうと思っている。

■小川敏夫(民主党)
民主党は、自民党や日本維新の会が進もうとしている新自由主義、つまり、勝った者が恵まれて当然、勝った者がどんどん栄えれば、いずれその恩恵がまわりまで行くという発想は持っていない。国民みんながしっかりと安心した生活を送れるような状況でなければならない。貧困対策の一番の基本は、雇用の場を確保すること。非正規雇用が増えている中で、安定雇用のもとでしっかりと働き、自らの生活をつくり、将来設計ができるようにすることが大切だと思っている。正規雇用まで不安定にするような、限定正社員は断じて認めない。さまざまな事情で働けない方の生活は、国が支えなければならない。また、貧困が世代間で受けつがれ固定化しつつあるのはおかしい。子どもは社会全体で育てなくてはいけないという観点から、しっかり対策をとらないといけない。また、母子家庭の苦しい経済的状況の改善をはじめ、女性の地位向上、女性の安定雇用の確保をしっかりと取り組んでいきたい。安部政権では、生活保護支給基準を下げるという方向性が示されているが、そうではなく、政治の原点は生活を支えるという基本を、これからも守っていきたい。

■東 祥三(生活の党)
政治家になる前は、国連工業開発機関で働き、主に中南米の国々で仕事をする中で貧困を目にしてきた。日本では、生活保護受給者は、バブル崩壊後、いったん88万人まで下がったが、その後、どんどん増えて、昨年末には、終戦直後を超える215万人に達した。日本はGDPで世界3位になりながら、幸福度で言えばOECDで23番目。後ろから数えた方が早い。これはひとえに政治の貧困だと深く確信している。バブル経済が崩壊したにもかかわらず、社会のしくみを何ひとつ変えずに今日まできた。その後の約20年間が、失われた時代だったという根拠は、ここにあるだろうと思う。塩野七生さんとローマで話す機会があり、国はなぜ滅ぶのかと質問した。彼女は、「ピークを達成した国というのは、制度、しくみを変えない限り衰退しかない」と語った。今、日本に問いかけられているのは、制度、しくみである。民主党政権は、制度、しくみを変えようとしたが、残念ながらできなかった。今の公政権においても、基本的な制度のしくみ、産業構造や雇用のあり様にきちんとメスを入れない限り、何も進まないと思っている。大変な時代だが、ひとりひとりが自分の頭で考え、行動に移していけえるような政治を、ともにつくりあげていきたいる。

■鴨 ももよ(社民党)
25年間、労働現場で、パートや派遣、契約社員、正社員など、働く人の労働相談を受け、改善のために会社と交渉などをしてきた。この25年間で、パート・派遣・非正規労働者は2倍の数に増えている。女性は52.5%を超え、若者も50%を超えている。まさに非正規労働者が社会の主人公になろうとしている。しかし、非正規労働者の賃金、労働条件は25年間ほとんど変わらない。100対50という格差もほとんど変わらない。この状況を何とかしなければという思いで活動してきた。安部政権は、解雇の規制緩和、限定正社員を新たに作ろうとしている。解雇の規制緩和で正社員が解雇しやすくなってしまったら、非正規労働者はどうなってしまうのか。労働者の使い捨てが進んでしまう。2008年末の年越派遣村のような状況に陥っていくという危機感をもっている。この状況を変えなければいけない。希望はディーセントワーク、人たるに値する労働を作ること。参院選での課題として取り組んでいきたい。

■内山あきら(新党大地)
新党大地の綱領には貧困の根絶を掲げ「国民を勝ち組、負け組と二分する新自由主義と決別し、貧困を根絶するとともに格差を是正する。額に汗して努力した者が報われる社会をつくる」と明記している。ワーキングプア、200万円の年収を稼ぐことができない人が1100万人を超えている。企業の社会的責任は雇用の場の提供にあるが、実態は、企業に都合のいい制度になっている。新しいシステムでなく、日本が今までやってきた年功序列や終身雇用というシステムを再度見直して取り入れるべきだと。具体的には、海外へ出ていった企業を日本に戻すために、社会保険料の負担軽減や税制優遇をするという、インセンティブを与え、安定した雇用を増やし失業者を職につかせる。TPPにも対抗しえる農業や林業をつくり、失業している人達の雇用を創出していく。女性や若者、高齢者の就労支援、ホームレスで住所がなく就職ができない人たちには、国がきちんと住まいを確保する政策をとるべきだ。在職老齢年金という年金制度で、高齢者の雇用を制限してしまうという制度は、高齢者の健康と老後の資金作りや、生活が苦しい高齢者の貧困のためにも、撤廃していくべきだ。

■高坂 勝(緑の党)
小さな飲み屋を営んでいる。30歳まではサラリーマンをしていたが心を病み、つぶれそうになったところで会社をやめた。世界や日本が幻想として追い続ける経済成長システム、新自由主義が、生きづらさの原因だとわかったので、成長しない飲み屋を始めた。成長しそうになったら週休3日に休みを増やした。空いた日にNPOをつくり、お米の自給、大豆の時給、空家のリフォームなどをして空家の利用をしている。成長しなくても幸せに生きられる。緑の党の特徴はみっつ。ひとつは、役員や候補者に必ず女性を半数以上入れるというルール。候補者も、結果的に7人が女性。ふたつ目は、市民と議員が対等だということ。最高決定機関は代表でも執行委員でもない会員。総会を開き、大事なことはみんなで意見を出し合って決めて行く、逆ピラミッド型、ネットワーク型組織。みっつ目は、世界90カ国の緑の党とつながり、一緒に世界を変えていこう、脱原発をしていこう、貧困の問題を解決していこう、グローバル経済の問題を解決していこう、と活動している。緑の党が目指す社会というのは、地域が、そこに暮らす人々が主役になり、誰でも安心して暮らせる社会。スロー・スモール・シンプルで、安心に心豊かに暮らせる社会。そういう観点から、貧困問題なども解決していかないといけない。アベノミクス、TPP、原発稼働には絶対に反対。憲法9条、幸福追求権、および生存権を壊していくことも許さない。大きなビジョンを持ちながら、新しい政治を作っていきたい。

■小池あきら(日本共産党)
貧困問題の考え方の根本は、貧困に落ちいった人に問題があるという自己責任論を克服していくことが大事だ。雇用の規制緩和、労働法制の規制を取っ払った政治には責任がある。アベノミクスには、国民の所得を直接増やす政策は一切ない。消費税は来年の4月に8%、さらに10%に。雇用も規制緩和し、限定正社員制度でいつでも正社員のくびを切れるようにする。こんなことをやればまさに貧困と格差が広がる。そして憲法問題。私は、憲法25条の生存権は一度たりとも実現されたことはないと思う。憲法を踏みにじるような政治をやっておいて、憲法のせいにして憲法を変える。こういうでたらめな話しはない。TPPの問題も、憲法に基づいてつくられる政治でなく、すべての制度や法律を弱肉強食路線で作り変える中身だ。こういうことを絶対に許すわけにはいかない。

<会場からの質問>
1.生活保護法の修正案が廃案になりましたが、参院選後に同じ法案が出された場合、賛成しますか、反対しますか。

(回答要旨を発言順に掲載。敬称略)

■高坂 勝(緑の党) 反対
■内山あきら(新党大地) 反対
■鴨 ももよ(社民党) 反対
■東 祥三(生活の党) 反対
■小川敏夫(民主党) 賛成

2.雇用の状況に対する言及がたくさんありました。もう少し具体的政策面を教えて頂きたい。

(回答要旨を発言順に掲載。敬称略)

■小川敏夫(民主党)
本来制限されていた特別な技能に限るというような形で、派遣労働の自由化を厳しく制限していくこと。女性の働く価値、能力の活用の場をもっと広げること。

■東 祥三(生活の党)
雇用構造、製造業の産業構造を転換しないといけない。「持続可能な成長を続けて行く」がキーワード。そういう流れの中で、新しい雇用構造を生み出していかないといけない。非正規雇用をできるだけ正規雇用にすべきなのは当たり前のこと。それを具体化させるためにはきちんとした雇用構造を作り上げないと変わらない。新たな雇用構造をつくりながら、今ある問題を、どのように解決していくか、この道を探る以外ないだろうと思っている。

■鴨 ももよ(社民党)
正社員の働き方は直接雇用で無期雇用である、各種保険すべて適用され、月給制である。こういった働き方が正社員の働き方だと思っている。このひとつが欠けたときに非正規労働者の働き方になる。均等待遇を実現する。理由のない有期雇用は禁止とする。どこでも誰でも時給1000円以上とする。ブラック企業には規制をきちんとかける。ホワイトカラーエグゼンプションも目論まれているが、長時間労働は規制をする。女性たちが子どもを産み、育て得られるような職場にするためには、雇用の在り方を、女性を基準にする。女性にとってやさしい職場は男性にとっても働きやすい職場になる。

■内山あきら(新党大地)
雇用対策イコール景気対策。日本近海に眠っているメタンハイドレートで雇用を生み出していくということができないだろうかと考えている。安部内閣はTPPに入りを表明してしまっているが、食糧自給率を高めていくために、一次産業に従事する人手が不足している。こういった産業に重点的に特化すべき、それが雇用の創出につながっていく。

■高坂 勝(緑の党)
今の日本の空家率は13%。2040年には43%になる。そいうものを有効活用していく。公営住宅をつくり住まいの貧困の問題を解決していく。一方、都市に集中している経済を地域に分散化していく必要がある。例えばドイツは脱原発で舵を切りながら、自然エネルギーで38万人の雇用を作り出している。日本にそれを置き換えると60万人の雇用を作り出せる。フード、エネルギー、ケア、食べ物に関する関連事業を大きな産業にしていかなければならない。エネルギー、農林水産業、福祉で、100万人以上雇用をつくれると試算している。日本の風土、政治、文化を加味しながら、循環する経済をつくり、雇用をつくり、安定した暮らしをつくっていこうと緑の党は考えている。

3.風によって投票先を変える選挙民をどうとらえますか?

(回答要旨を発言順に掲載。敬称略)

■高坂 勝(緑の党)
無党派層が4000万人いると言われている。その方々が、そのときどきで政治を見て選んでいくというのはポジティブにとらえればいいと思っている。組織票で入れなければいけない、応援しなければいけないというかたちから、自らの意思で選んで入れる、政治にコミットメントしていく社会にしたいと思っている。

■内山あきら(新党大地)
風で一票投じる方も有権者。その風を受けられるように広く帆を広げたい。

■鴨 ももよ(社民党)
私の風を吹かせたい。それしか私が当選することができないと思っている。小さな小さなユニオンで、小さな小さな政党だが、風を吹かせるよう選挙を闘いたいと思っている。

■東 祥三(生活の党)
ある人がこういうことを言っている。風が吹けば凧は誰がやっても上がる、風がないときに凧を上げるのはどうしたらいいのか、自分で走れ。それにつきると思う。

■小川敏夫(民主党)
風に流される人が悪いというわけではなく、そのときの政治の状況をしっかり判断し、投票する人がいるから政権が変わっていくという役割がある。政治を変えていく上で必要だと思っている。

 

4.反貧困はおおきなテーマですが、反貧困・脱原発・護憲グループと協力する必要があると思います。この三本の矢をどう考えていますか。

(一部政党退席のため、2政党のみが回答。回答順に掲載。)

■小池あきら(日本共産党)
国会での闘いでは、立場の違いを超えてつながろうと取り組んでいる。一致する課題などでは、集会へ挨拶に行ったり、共にデモ行進をしたりする機会はたくさんある。選挙では、全てについて一致する、条件が合う政党はいまのところないが、今こういう状況で、貧困、護憲、原発問題でも一貫して主張してきた日本共産党を強く大きくして頂くということが国会での力関係を大きく変えることになると思っている。大同団結して力を合わせて、脱原発、反貧困、憲法を守るという候補をぜひ国会に押し上げていただきたいと思う。

■高坂 勝(緑の党)
すべての問題をシングルイシューとして考えていけば、今後、協力できることがあると思う。緑の党の会員の方々と相談しながら参院選後も取り組んでいきたい。

5.障害者問題について。民主党政権下で障害者自立支援法が、厚労大臣から障害者の尊厳を傷つけたと明言されました。しかし、名前を変えただけの障害者総合支援法では応益負担が残されたままです。収入によって若干の軽減措置があるものの、生きることに直結する支援をサービスと呼び、貧しい者はトイレに行く回数、寝返りをうつ回数も減らさないといけないのです。生きることそのものを金銭に変換にしなければならないという状況についてどう考えておられますか。

(回答要旨を発言順に掲載。敬称略)

■小池あきら(日本共産党)
障害者自立支援法の抜本的な見直し、応益負担は廃止しなければならない。現職時代に、障害者団体のみなさんと団体の違いを超えて力を合わせて、涙を流しながら闘い続けた課題。これは、断固として中心課題として闘っていきたい。

■高坂 勝(緑の党)
応益負担をなくしていくことが必要だと思う。緑の党の政策の中にこういう文言がある。「障害の有無にかかわらずともに学び、ともに暮らすを実現するための制度への改正を進めていく」。そういう社会に向けて緑の党は政策を実行していこうと思っている。

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