NPO法人「官製ワーキングプア研究会」さんからの投稿 野田市児童虐待死に向けての声明 ~社会の貧困化と公務の非正規化の犠牲者を悼む~

  • 2019年02月22日
  • 投稿者:反貧困ネットワーク
  • カテゴリー:お知らせ

野田市児童虐待死に向けての声明 ~社会の貧困化と公務の非正規化の犠牲者を悼む~

2019年1月、千葉県野田市で10歳の小学生を虐待死させた父親が逮捕されました。この事件をめぐっては、市教委が被害者へのアンケート結果を加害者である父親に手渡すといった、背信行為ともいえる事態や、DV被害者と考えられる母親を、保護するのでなく容疑者として逮捕するといった手法に、疑問や批判が相次いでいます。
2月14日に国会内で開かれた「『女性や子どものへの暴力を許さない法律を作る』院内集会連続開催実行委員会」主催の緊急集会では、有識者らから、専門的知見のある支援者や当事者の意見を政策決定に取り入れるべきこと、行政より身近な存在である学校をDVの発見の場として生かすべきこと、スクールカウンセラーなどを生かし、母へのDVと子どもへの虐待を一体のものとしてサポートを行うべきこと、こうした知見を共有するため教員・行政の管理職・教育委員会に対する研修を行うべきこと、などが提案されました。
ただ、これらを担うべき公務の現場を振り返ると、たとえば児童虐待などの重大事案に対応する児童相談所の児童福祉司は国家資格ではなく、大学で心理や教育を学んだ一般行政職員の中から自治体が任命するという「任用資格」で、多くの自治体で2~3年程度で他の部署へ異動させています。その一方で、長期的な観点に立って寄り添うことを要する業務の多くは、不安定雇用の非正規公務員によって担われるという矛盾に陥っています。
非正規公務員の待遇改善などに取り組む当会は、上記の緊急集会での提案を支持するとともに、公務サービスを担う一線の公務従事者の労働条件の改善なしにはその真の実現はありえないと考え、以下のように求めます。
1)スクールカウンセラーやDV相談員、家庭児童相談員など専門性の必要な業務の多くは、非正規公務員によって担われていますが、昨年5月の地方公務員法・地方自治法改定で導入された「会計年度任用職員」制度は、1年有期という不安定な非正規公務員を合法化・固定化する改変でした。一線で児童虐待やDV被害者の支援にあたる非正規公務員のこのような不安定化を正し、支援に集中できる安定雇用と待遇の引き上げを求めます。
2)学校が、DV発見の場としての役割を果たし、教職員がDV研修などを余裕をもって受けるためには、教員の多忙化を是正する必要があります。それは、文科省の「学校における働き方改革」で打ち出されたような変形労働時間によってではなく、教員の仕事量に見合った人員の充実と、そのための予算措置なしでは実現しません。また、教員の世界でも非正規化は進んでおり、生活不安を抱える非正規教員が担任を務めていることさえ少なくありません。こうした非正規教員の正職員化も含め、教員の働き方と待遇の改善を求めます。
3)2000年代初頭の「聖域なき構造改革」以降、福祉や教育、男女平等をはじめとする生活関連の公務サービス予算は縮小傾向をたどり、同時に、公務員はムダ、という「公務員たたき」も続けられてきました。一方で、少子高齢化や貧困化の中で求められる公務サービスは増大しています。児童相談所の現場でも「子の面前でのDVは児童虐待にあたる」といった新しい定義が付け加えられて以降、受け持つ件数は激増しています。一線の職員の疲弊は著しく、意欲の低下にもつながりかねません。このような、住民ニーズの現状に合わない財政削減や、実態に基づかない「公務員ムダ」論をあおる行為にストップをかけ、生命を守る住居や雇用など、もっとも重要かつ必須の住民サービスの第一線に立つ各種相談員の育成、強化を求めます。
2019年2月22日 NPO法人「官製ワーキングプア研究会」

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