貧困率についての声明(2011/7/20)
- 2011年07月20日
- 投稿者:反貧困ネットワーク
- カテゴリー:声明・提言
2011年7月20日
反貧困ネットワーク
(代表 宇都宮健児)
2009年10月、政権交代直後の厚労省が初めて発表した相対的貧困率は、それぞれ15.7%、14.2%だった。それぞれ0.3%、1.5%の上昇であり、特に子どもの貧困率の上昇幅が著しく、相対的貧困状態にある子どもの数は3年間で約23万人も増加したことになる。
この結果は、厚労省が3年に一度行う国民生活基礎調査(大規模調査)のデータに基づいており、今回発表されたデータは2009年1~12月の所得に基づいている。前回調査の根拠データは2006年1~12月だった。
2007年2008年2009年に何が起こったかを振り返ってみれば、07年はいわゆる「ネットカフェ難民」問題で始まり、7月には「おにぎり食べたい」という日記を書き残して亡くなった北九州市の52歳男性の餓死事件が発覚し、年間を通じて日雇派遣会社グッドウィルの「データ装備費」問題が世間を賑わした。08年にはリーマンショックに端を発した大量の派遣切りがあり、年末には「年越し派遣村」が誕生した。国民年金1号保険料や国民健康保険料の未納・滞納問題が広く知られるようになったのも、この数年間である。そして09年にはそれらすべてを受けての政権交代があった(子ども手当や公立高校の授業料無償化が始まったのは2010年に入ってからであり、今回のデータには反映されていない)。
この3年間を振り返ると、相対的貧困率の上昇は当然のことのように見えてくる。それだけ、日本社会の痛みや綻びがさまざまな形で噴出した3年間だった。
それでも、子どもの貧困率の上昇幅には驚きを禁じ得ない。これは、とりもなおさず、17歳以下の子どものいる世帯のそれ以外の世帯に対する相対的な低所得化の進行、すなわち高校生以下の子どもを持つ「働き盛り」の親たちの雇用の不安定化・低所得化を示している(その下げ幅が著しいために、ひとり親世帯の相対的貧困率が「改善」してしまうという「逆転現象」すら起こってしまった)。「雇用融解」から「雇用壊滅」(風間直樹)に至る事態が如実に数字として表れた結果だろう。
周知のように、日本は世界一の超少子高齢化社会であり、現役世代およびその子どもたちが十分に力を発揮できる環境整備は、当人たちにとってはもとより、社会全体の持続可能性において喫緊の課題であることは論を俟たない。私たち反貧困ネットワークは、相対的貧困率の削減目標を掲げ、政策提言を行ってきた。もっとも責任の重い政府・自治体をはじめ、NPO・教育関係者・企業・労働組合も、それぞれの立場から、高すぎる子どもの貧困率の改善に取り組んでいかなければならない。
所得の多寡のみによって人々の幸福が測られるわけではない。しかし、相対的貧困状態の放置は、多くの人々の生き死にを左右し、悲惨な状況を生み、ひいては日本社会全体の衰退に直結する。「事態を小さく見せて、とにかく今をやり過ごす」のはもう止めにすべきだと、私たちは今年改めて学んだはずだ。
次の国民生活基礎調査(大規模調査)は、2012年(来年)1~12月の所得を元に行われ、その結果は2014年半ばに発表される。さらに暗澹たる事態が進まず、好転の兆しが現れる結果にするために、すべての関係者の尽力を求める。
以上