反貧困世直し大集会2011「震災があぶりだした貧困」集会宣言
- 2011年10月16日
- 投稿者:反貧困ネットワーク
- カテゴリー:集会宣言
3月11日に発生した東日本大震災は、約2万人の死者・行方不明者を出すなど、戦後最大の災害となりました。生き延びた人たちも、家を流され、仕事を失い、平穏な暮らしを奪われました。特に東京電力・福島第一原子力発電所での大事故は、福島県の大部分を放射線管理区域にしてしまうような汚染を広げ、人々の暮らしを根こそぎにし、復興の入口にすら立てない状況にしています。
貧困問題に取り組む私たちから見ると、今回の大震災で日本の貧困問題がより一層深刻化することを懸念せざるを得ません。
同時に私たちは、日本社会がすでに2009年の時点で相対的貧困率16%という状態にあったことを知っています。つまり、何十万人という被災者の中に、すでに6人に1人という割合で、また地方の疲弊を勘案すれば、もしかしたらそれ以上の割合で「もともと生活の苦しい人たち」が含まれていた、ということです。
私たちがさらに懸念するのは、その「もともと生活が苦しかった人たち」に、今回の大震災がより大きな打撃を加えていることです。
災害は万人に等しく襲いかかります。しかし、それを受け止める人々の“溜め”には個人差がある。“溜め”の小さい貧困層、もともと社会的に排除された人々が、この災害で大きなダメージを受けています。津波や原発事故からとっさに避難することが困難だった障害者や高齢者、さまざまなハンディを負うがゆえに避難所生活で肩身の狭い思いをした人々、貯金やツテがないがゆえに最後まで避難所から出ることができなかった人々、いま現在、仮設団地や地域に居場所を見出せない人々などです。その意味で、震災は従来からある貧困をより深刻に浮かび上がらせる機能を果たしています。本集会のタイトルを「震災があぶり出した貧困」と名づけたのは、そのためでした。
そして、私たちがさらにさらに懸念するのは、その大きなダメージを受けた人たちが、これからの復興過程、まちづくり過程において、取り残されていくのではないか、ということです。大きなダメージを受けた人たちは、そのダメージの大きさゆえに、大きな声を上げることができません。本当にしんどい人は「しんどい」とすら言えない。それらの声が十分に聞こえず、「ない」ものとして扱われるとしたら、復興のプロセスは、同時により大きな社会的排除のプロセスと化してしまうでしょう。それは、より多くの人々が安心して暮らせるスペースを、この社会からさらに奪うことになりかねない。私たちはそのことを強く懸念します。
だから私たちは望みます。まずは人々の暮らしがしっかりと支えられ、それぞれの必要に応じた対応のなされることを。そして、多様な人々の多様な声がきちんと積み上げられ、それがこれからのまちづくりにきちんと反映されることを。そしてさらに、復興した町が、震災以前よりもより多くの人々にとって住みやすく、暮らしやすい町になることを。それが、私たちの願いであり、また同じ社会に暮らす私たちの責任でもある、と思います。しかもそれは、被災地に限らない、私たちの社会全体の課題でもあります。
そのような観点を手放すことなく、ここに参加した私たちは、被災者とともに、そしてより多くの仲間とともに連帯し、これからの復旧・復興と社会全体の建て直しに取り組んでいきたいと思います。
2011年10月16日 反貧困大集会参加者一同